なんで村上春樹?
以下をご紹介します。
<走ることについて語ること 第1話>
痛みは避けられない、でも苦しみは自分次第だ
ある時、そんな言葉を憶えた。
そして、長距離レースを走るたびに、
頭の中でその文句を繰り返すようになった。
きついのは当たり前
でも、それをどんな風に苦しむかは自分で選びとれる。
Suffering is optional.
へこたれるも、へこたれないも、こちら次第。
苦しいというのはつまり、僕らがオプションを手にしているということなんだ。
<走ることについて語ること 第2話>
僕やあなたのような普通のランナーにとって
レースで勝ったか負けたか
そんなのはたいした問題じゃない。
自分の掲げた基準をクリアできたかどうか
それが何よりも重要になる。
ランナーはあなた自身に委ねられている。
自分の中でしか納得できない物事のために
他人にはうまく説明できない物事のために
長い時間制をとってしか表せない物事のために
僕らはひたすら走り、また、こうして小説を書く。
<走ることについて語ること 第3話>
やっとゴールのマラトン村に辿り着く。
炎天下の42キロを走り終えた達成感なんてどこにもない。
頭にあるのは、ああ、もうこれ以上走らなくてもいいんだ
ということだけ。
村のカフェで一息つき
冷えたビールを心ゆくまで飲む。
ビールはもちろんうまい。
でも、僕が走りながら切々と想像していたビールほどうまくはない。
正気を失った人間の抱く幻想くらい美しいものは
この現実世界のどこにも存在しない。
<走ることについて語ること 第4話>
走っているときに頭に浮かぶ考えは空の雲に似ている。
色んな形の色んな大きさの雲。
それらはやって来ては去ってゆく。
でも、空はあくまで空のままだ。
雲はただの客人に過ぎない。
通り過ぎ、消えてゆくものだ。
暑い日には暑さについて考える。
寒い日には寒さについて考える。
つらいことがあった日には
いつもより少し長く、少しきつく、一周余分に走ることにしている。
そして、あとにただ空だけを残す。
。。さて、これは何でしょうか?
正解:
村上春樹氏が初めて執筆したCMナレーションです。
2012年の箱根駅伝の時に流れた、サッポロビールのCM。
執筆:村上春樹
監督:是枝裕和
語り:仲間由紀恵
音楽:明星/Akeboshi
ビールの道は果てしない。
それでは、また。あでぃおーす。